悪魔の熱情リブレット
「なんでシルヴェスターに懐くのさ!生かしたのは僕だよ!?」
「そういう怒りっぽいところが敗因かと」
冷静な部下の意見に白い悪魔は自分の前髪を持ち上げようとする。
「お止め下さい!」
破壊されてはたまらない。
シルヴェスターの慌てた声音を楽しむように笑うアンドラス。
「なら、僕のティアナをこっちにちょうだい」
この命令にシルヴェスターは無表情で従った。
ティアナが子犬のように潤んだ目で見つめてきたが、気づかないふりをして主に差し出す。
目当ての少女を自分の腕に抱きしめ少し機嫌が良くなったアンドラスは、そのまま彼女を外に連れ出した。
シャッテンブルクの町は、戦争が多いこの地域に相応しい町の造りをしている。
いつ敵が攻めて来ても大丈夫なように城塞教会が建てられているのだ。
城塞教会は戦争中、町の人々の避難場所となる。
礼拝を行う教会を中心として円を描くように避難してきた人々が寝起きする部屋が建てられている。
山の上に、二重の分厚い壁に囲まれて建っている教会は純白で壮麗だ。
アンドラスはその教会に続く急な木造階段を上がりながら言った。
「歌を歌いたいなら、僕がとっておきの場所に連れてってあげるよ」