悪魔の熱情リブレット
ティアナは涙目で首を勢い良く縦に振った。
意地悪く微笑むアンドラス。
「僕以外に抱きつくな」
低く鋭い命令の言葉。
恐かったけれど、ティアナは「何で?」と尋ねた。
「君がシルヴェスターに抱きつくの見る度にイライラするんだよね。…病気かな?」
悪魔は病気になどかからない。
どうやら彼はイライラする理由が自分でもわかっていないらしい。
アンドラスはもう一度強く言った。
「わかったティアナ?抱きつきたくなったら僕にして。他の野郎はダメだよ。いいね?」
「わかったの…」
「いい子だね」
素直に頷いた彼女を地に下ろしてやる。
それからアンドラスは再び剣を手に取り、穴を真っ二つに切り裂いた。
すると赤黒い空間への道は消滅し、後には倒れた十字架だけが残された。
「さて、地獄がお気に召さないなら…うーん、そうだな…」
悩みつつ、墓地を出て教会へ向かったアンドラス。
彼は教会の入り口まで行ったが、そこで立ち止まり呟いた。
「やっぱり中に入るのは嫌だな…」
彼は突然ティアナを抱えると、軽々と教会の屋根に飛び上がった。
「うきゃあ~!」
驚いて奇声を発する少女を落ち着かせ、屋根の上に座らせる。
しかし上手くバランスがとれなくて危なっかしいため、最終的にアンドラスが膝に乗せる形になった。