悪魔の熱情リブレット
それから数日後、ティアナが進歩したかというと…。
「シルシル~!今日の夕食は何~?」
とことこと料理中のシルヴェスターに近づくティアナ。
「メインは鶏肉のグリルです」
この一年で料理を何とかマスターしたシルヴェスターは毎日彼女のために腕を振るう。
意外と楽しんでいる彼に以前アンドラスは「ニスロクに弟子入りすれば?」と嫌みを言った。
ニスロクとは地獄に住む料理命の悪魔だ。
料理のことで彼の右に出るものはいない。
「自分の主は貴方だけです」
シルヴェスターは嫌みにも真面目に返答したのだった。
さて、今夜は豪勢な鶏肉が味わえる。
嬉しさのあまりティアナがとった行動はアンドラスに禁じられたことだった。
「やった~!お肉だ!」
約束も忘れ、抱きつこうとした瞬間。
「ティアナ…?」
色で表現するならどす黒いだろう。
脅すような声が地下の料理場に響いた。
「あ、あぁ…」
シルヴェスターの体に触れる前に固まったティアナ。
よって未遂だ。
「いい子だね、ティアナ」
先程とは打って変わって機嫌の良い声音に彼女は胸を撫で下ろす。
「おいで…」
手招きされアンドラスに近寄る。
「さあ、続きをどうぞ?」
両手を広げて抱き留める気満々の彼。