悪魔の熱情リブレット
第三幕
人の気配がないシャッテンブルク。
しかしその町の時は止まらない。
今日も精巧に造られた町の時計塔からは鐘の音が響く。
その塔に設置されたシャッテンブルクのシンボルでもある巨大からくり時計から、一時間事に可愛い人形が顔を出す。
住人がいなくなっても進み続ける時計をティアナは部屋の窓から眺めていた。
時計塔はこの町のどこに居ようと絶対に見える。
シンボルなのだから高く目立つように建てられたのだ。
「…今日も行こう」
曇天なのが気になるが大丈夫だろうと判断。
少女は窓辺から離れ自室を出た。
一階へ降り、一人で外に行く。
基本的にアンドラスはティアナを自由にさせていた。
町の外にさえ出なければどこに行こうとティアナの自由。
少女は静かな石畳の歩道を歩き、教会へと向かった。
長い木の階段を上がりながら思い出す。
(ママと一緒に上ったよね。ここで私、転んだ気がする)
二年前のことを考えながら教会の入り口に到着した。
そう、悪魔との生活も二年目に突入していた。
大分アンドラスへの接し方がわかってきた頃だ。
強く反抗してはいけない。
おねだりをする時は甘える。
この二つを忘れなければ上手く生きていけるのだ。
ティアナは教会の大きな扉を開け、中へと入っていった。