悪魔の熱情リブレット
「薬学…薬学…あ~思いつかない…」
アンドラスは壁に自分の頭を打ち付けてみた。
「…無理。記憶にない」
頭に衝撃を与えて何かを思い出すという古い手は無意味に終わった。
「とりあえず自分はスープでも作ってきます」
そう言ってシルヴェスターは地下へ行ってしまった。
残されたアンドラスとオセー。
何をすべきかわからず戸惑う彼らの横で、苦しそうにベッドで寝返りをうつティアナ。
「オセー、もう今日は帰っていいよ。ティアナこんなだし」
アンドラスが「さっさと出てけ」と言いたげに、しっしと手を振った。
「教え子がこんな状態では心配だろうが。…下で待つ」
気をきかせたのか何なのか、オセーはすんなり出て行ってしまった。
「さてと…」
熱が上がり寒そうにするティアナを見下ろす。
「本当…悪魔騒がせな奴…」
アンドラスは少女の額に手をそっとのせた。
眠っていたティアナがまぶたを開け、ぼんやりとした思考でアンドラスを見つめる。
「起こしちゃった?」
彼女は微かに首を横に振ると、再び目を閉じた。
「ティアナ…?」
いつもと違って余りに弱々しい少女の反応に、アンドラスは本気でティアナが死ぬのではないかと思ってしまった。