悪魔の熱情リブレット
「ティアナ!!無事か!?意識ある!?」
アンドラスが焦った声を出した。
「アンドラス…?」
「ティアナ?ティアナだよね?」
当たり前のことを尋ねるアンドラスに、ティアナは不思議そうな表情で頷いた。
「よかった…。ねえ、今ティアナの中に何かいた?」
この問いで思い出す真っ黒の唸り声。
彼女は小さく首を縦に振り、震え出した。
「やっぱりか…」
アンドラスは苦々しく舌打ちをした。
先程、ティアナが再び目をつむり眠りに入った時、何度か呼びかけたが自分を落ち着かせ少女の寝顔観察に移ったアンドラス。
「何で動揺してるんだ…たかが人間ごときの風邪程度で…」
そんな独り言を呟いているとティアナが何か喋った。
「…パ…マ、マ…」
おそらく両親の夢でも見ているのだろう。
彼女の目尻から一筋の水滴が零れ落ちた。
アンドラスは無意識に指でその雫を掬っていた。
「泣くな…」
ぽつりと漏れた思い。
その声は誰にも届かない。
「女の涙は武器でしょう?こんなところで使わないでよ」
しかも無意識に。
アンドラスが一人で「ティアナは無防備すぎ!甘すぎ!」とか言ってる時だった。
凍えるような冷たさ。
神経を狂わされそうな不協和音。
そんな絶望的すぎるほど凶悪な悪魔の存在を感知した。
ティアナの中に。