悪魔の熱情リブレット
アンドラスでさえ畏怖するほどの気配。
そのため慌ててティアナを起こしたのだ。
このまま目の前の少女が連れ去られてしまう気がして…。
「主よ。どうしました?声を荒げていましたが…」
料理場から二階に戻って来たシルヴェスター。
手には味つけの薄い野菜スープを持っている。
「…後で話す」
それだけ言うとアンドラスは階下に行ってしまった。
いつもより低い主の声に何かあったと察したシルヴェスターは、ティアナにスープを飲むよう指示して自分も一階に降りて行った。
一階の居間でアンドラスは部下と戦友に語った。
ティアナの中にいた悪魔の存在を。
「本当にいたのか?我が輩は気配を感じなかったぞ?」
オセーは豹の姿のまま、器用に椅子の上に乗った。
「自分も感じませんでした」
シルヴェスターがオセーに同意する。
「いたさ。最低最悪のどん底の気配がした。どの悪魔かはわからなかったけど」
脱力して椅子に腰かけるアンドラス。
「貴殿の話が本当だとして、一体その悪魔はどうやってティアナに入った?我らに気づかれず入り込むなんて不可能だ」
オセーの疑問に黙り込む面々。
重たい空気が流れる中、表から凄まじい怪物の鳴き声が聞こえた。