悪魔の熱情リブレット
「ヴォラクが来ましたね…」
鳴き声はヴォラクのペットであるドラゴンのものだ。
ヴォラクはシルヴェスターが料理するようになってからもちょくちょくやって来る。
理由は食材提供だ。
料理ができても食材がなくては意味がない。
シャッテンブルクの悲劇の夜に悪魔達は家畜まで皆殺しにしてしまったため、この町には新鮮な肉がない。
また作物の栽培に関しては、面倒臭がりのアンドラスと主の命令をこなす以外には自発的に行動しようという意思がないシルヴェスターがする訳がない。
現在、町の片隅には荒れ果てた畑が放置されてる状態だ。
「やっほ~!食べ物を配達~!」
場違いなほど明るい声。
ヴォラクは居間に入って来るなりテーブルに食材を出現させた。
提供するものが料理から食材に変わってもヴォラクの美学は変わらない。
彼はたくさんの食材の中に相変わらず毒入りを交ぜていた。
それらの食材はいちいちシルヴェスターがチェックしてから料理される。
よってティアナの口には安全なものしか入らない。
さながらシルヴェスターは陰の功労者だ。
「な~に、な~に?なんか暗~い」
雰囲気の悪さを指摘するヴォラク。
シルヴェスターは食材を確認しながらティアナに起こったことを淡々と話した。