悪魔の熱情リブレット


 足早に秋は過ぎ去り、寒さの厳しい冬が訪れた。

ティアナが住む地方は毎年雪が降り積もる。

もちろんシャッテンブルクにも白い妖精は舞い踊る。

冬は寒さでなかなか外に出ようと思えないが、雪が降ると遊びたくてうずうずするティアナだった。


 風邪が治ってから今まで、特にティアナに変化はなかった。

あの時以来、夢にも現にもあの真っ黒い唸り声は現れない。

しかしアンドラスはかなり警戒し、一日のほとんどをティアナと離れず過ごすようになっていた。

また、薬をつくってくれた悪魔バシンはティアナの体調を心配して度々遊びに来る。

オセーやシルヴェスターと違って固くない性格のバシン。

今ではすっかりティアナの良き遊び相手だ。



 何事もなく過ぎていく時。

いつしか雪は溶け、様々な命が活動する春がシャッテンブルクにやって来た。

春になって活動し始めるのは冬眠していた動物達だけではない。

悪魔見たさに「呪いの町」に訪れる命知らずな人間も活動を始めるのだった。



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