悪魔の熱情リブレット

「…くそおぉぉ!!!」

アンドラスは大声を上げながら持っていた剣を力任せに投げた。

長剣は空を舞い、遠くの民家の壁に突き刺さる。

意外過ぎるこの行動に呆然となるティアナとシルヴェスター。

アンドラスは肩で大きく息をしている。

「シルヴェスター!!」

「あっ、はい!」

いきなり呼ばれ驚きを隠せなかったシルヴェスター。

「片付けておけ」

すでに無残な肉塊と成り果てている男達を示し命令する。

「わかりました」

一礼し片付けを始める。

アンドラスはそれを見てからゆっくりとティアナに近づいた。

「アン、ドラス…?」

血まみれの悪魔。

ティアナは彼に殺されるのではないかと強く感じた。

剣がなくとも、彼ならこんな小さな少女など一ひねりだろう。

ティアナは今さら、あのような質問をした自分を責めた。

(もう、ダメだ…)

悪魔の足音がはっきり聞こえる。

(私、殺される…!)

恐くて恐くて、きつく目をつぶった。

「…ティアナ」

アンドラスの微かな声。

もう悪魔は目の前だ。




 しかし、いくら待っても悪魔からの死への誘いは訪れなかった。

アンドラスはティアナをただ見つめた後、再びゆっくりと歩き出した。


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