悪魔の熱情リブレット


――憎いだろう?


声は語る。


――あの男が…町の連中が…



「に、くい…」


黒い激情。


――子供を救いたいだろう?


「嗚呼、ティアナ…!ティアナ!」


切なる願い。



――ならば、殺せ!奴らを殺してしまえ!!



突如、開け放たれていた玄関から勢いよく風が入り込んできた。

そのせいなのかはよくわからないが、それと合わせるかのように一冊の本が棚から彼女の足元に落ちてきた。


落ちた拍子に開かれたページには、カラスの顔の悪魔の絵。


彼女は魅入られたように、その絵を凝視した。

こんな本がこの家にあっただろうか?

けれど、よく考える間もなく奪われた思考。


――悪魔を呼ぶのだ。さすれば、この町の人間など立ち所に始末してくれよう…!



頭の中に響く声が言う。


 
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