悪魔の熱情リブレット
第六幕
この世に生まれて十二年。
悪魔と暮らして早六年。
そんなティアナの心に沸き起こった冒険心はアンドラスの怒りに触れた。
事が発覚した日、アンドラスは普段通り居間にいた。
愛用のカラスの仮面を丁寧に布で拭く。
神に反逆した遠い昔から戦いを共にしてきたその仮面には、もう消えることのない血の跡が染みついている。
「これ、新調したら威厳が落ちるかな…?」
年季が入っているからこそ破壊の悪魔の恐ろしさが引き立つ。
しかしぼろぼろなのも事実。
「まだ使えるよね…」
丁度手入れを終えた時、ティアナが居間にやって来て言った。
「ちょっと教会に行ってくるね」
「一人で?シルヴェスターでも連れていきなよ」
すると彼女は慌てて首を横に振った。
「一人で大丈夫だよ!心配しないでね!六時くらいには帰ってくるから」
只今の時刻、午後の二時。
(四時間も教会に…?)
「行ってきます」と言って早足で出て行くティアナ。
アンドラスは少女の言動を訝しみ、後をつけることにした。