悪魔の熱情リブレット
「あ、くま…を?」
神に祈るのではなく悪魔を呼べというこの声の主は、一体何者なのだろうか。
しかし、彼女の胸中はそれどころではなかった。
――死を好む奴がいいな。破壊の悪魔アンドラスなんてどうだ?
カラスの絵の上に書かれている文字が彼女に主張する。
「我はアンドラスなり」と。
「アンドラス…?」
この時、黒い霧に支配されそうだった彼女の意識を、外の喧騒が現実へと引き戻した。
広場に面して建っているこの家は、ほぼ広場の真正面にあると言っていいくらい距離が近い。
「ティアナ!」
ガタンと椅子が倒れた。
彼女は自らの力で椅子ごと床に倒れ込むと、這うようにして外へと出て行った。
「はあ…はあ…」
木の椅子は頑丈な上に重い。
体力を削られながら必死で進んでいる途中、彼女は広場の中央に巨大な火柱を確認した。