悪魔の熱情リブレット
さて、アンドラスに思惑が覚られていないと信じ込んでいるティアナは、町の下り坂を歩きながら口笛を吹いていた。
(もう少しで入り口だ…)
町の出入り口まで後わずか。
目の前に見えてきた石造りの階段を降りればシャッテンブルクの外に出る。
ティアナは階段の前まで来てゴクリと唾を飲んだ。
「いざ!未知なる世界へ!」
一歩足を踏み出したその時、からかうような声がした。
「どこに行くのかな?ティアナちゃん」
真後ろから感じる気配。
「ア、アンドラス!?」
驚いて声がひっくり返る。
振り向くと白い悪魔が口角を上げて立っていた。
「逃げるの?」
「ち、違うよ!あのね、えっとね、ちょっとだけ外に…」
しどろもどろするティアナにアンドラスはゆっくりと近づいた。
「それで?嘘ついて、逃げて、それからどうするの?」
口調は穏やかだが雰囲気が恐い。
ティアナは目線を地に落とした。