悪魔の熱情リブレット
「逃げるなんて許さない!!」
間近で怒鳴られ怯む。
「ティアナは僕に生かされてるんだ!僕の言うことを聞け!!」
強く握られた両手が痛い。
吐き捨てるような口調のアンドラスが恐くて、ティアナはとうとう涙を零した。
「私が、玩具だから…言うこと、聞かなきゃ…いけないの?玩具に、意思なんて…」
――必要ないの…?
「うるさいよ」
少女の問い掛けはアンドラスの冷たい一言によって遮られた。
そして――。
ほんのりと熱を帯びた悪魔の唇が、少女の柔らかい唇を奪った。
予想外の展開に驚いて目を大きく見開くティアナ。
突然、風が舞った。
それはアンドラスの前髪を弄び、彼がひた隠しにしてきた瞳を曝した。
「ティアナ…」
唇が離れ、アンドラスがティアナを見つめる。
その悲しいほどに美しい金色の瞳で。
「アンドラス…?」
初めて見る彼の瞳に囚われる。
無意識に高鳴る心臓。
金の瞳から視線をそらせない。
まるで彼に、見えない鎖で全身を縛られてしまったかのようだ。
恐くはない。
彼女はずっとその瞳を見つめていたいと思った。