悪魔の熱情リブレット
しかし彼は手で破壊の瞳を隠した。
「ダメ…」
ティアナが小さく呟く。
「え?ティアナ?」
少女は彼の手を退かし、もっとよく見ようと前髪を掻き分けた。
アンドラスの綺麗な顔が露になる。
「初めて見た…」
ティアナは優しい表情で微笑んだ。
「きれい…」
この一言にアンドラスの心臓が大きく跳ねた。
「え…あ…」
言葉が詰まり、見る見るうちに顔が紅潮していく。
「ティアナ…」
何を言えば良いのかわからない。
戸惑いながら少女の名を呼んだ時だった。
「くっ!」
唐突に押し寄せてきた破壊衝動。
アンドラスは苦しげに顔を歪めた。
「アンドラス?」
「ティアナ…これ以上…」
――僕を見ないで…
彼は再びティアナに覆いかぶさり、激しく口づけた。
瞳を見られないように。
否、それは口実に過ぎない。
自分の身勝手な欲望を満たすため、破壊の悪魔は己の本来の性質を押し殺したのだった。