悪魔の熱情リブレット
あの後、強引に家に連れ戻されたティアナ。
アンドラスは彼女を二階の自室に押し込み、自分は顔を冷やすため屋根の上に上った。
(抑えられなかった…)
まだ頬が熱い。
顔を見られることに慣れていない上に「きれい」と言われて落ち着かない心臓の鼓動を聞きながら、彼は自問した。
(僕は、ティアナをどうしたいんだ…?)
彼女が「玩具じゃない」と叫んだ時、アンドラスは胸に小さい針を刺されたような感覚を覚えた。
(ティアナは、玩具じゃない…)
何かと「僕の玩具」と言って独占欲を表してきたアンドラス。
しかし、いつの間にか彼の中で少女は玩具ではなくなっていた。
必死に玩具を否定するティアナに向かって思っていたこと。
(そうだよ。ティアナは玩具じゃない。そんな言葉じゃ、もうティアナの心を縛れない…)
わかっていた。
だから口づけた。
誰かを繋ぎ止めておきたいなどという感情は初めてで、欲望のままに行動することしかできない。
(僕はティアナをどうしたいんだ…?)
同じ質問の繰り返し。
出会った頃、飽きたら壊すと宣言しておいて、幼い少女の成長を見守って抱いた思いは――
「まさか…」
白い悪魔は自嘲した。
「まさか、ね…」
――これが、恋っていう感情なのか…?