悪魔の熱情リブレット


 あの後、強引に家に連れ戻されたティアナ。

アンドラスは彼女を二階の自室に押し込み、自分は顔を冷やすため屋根の上に上った。

(抑えられなかった…)

まだ頬が熱い。

顔を見られることに慣れていない上に「きれい」と言われて落ち着かない心臓の鼓動を聞きながら、彼は自問した。

(僕は、ティアナをどうしたいんだ…?)

彼女が「玩具じゃない」と叫んだ時、アンドラスは胸に小さい針を刺されたような感覚を覚えた。

(ティアナは、玩具じゃない…)

何かと「僕の玩具」と言って独占欲を表してきたアンドラス。

しかし、いつの間にか彼の中で少女は玩具ではなくなっていた。

必死に玩具を否定するティアナに向かって思っていたこと。

(そうだよ。ティアナは玩具じゃない。そんな言葉じゃ、もうティアナの心を縛れない…)

わかっていた。

だから口づけた。

誰かを繋ぎ止めておきたいなどという感情は初めてで、欲望のままに行動することしかできない。

(僕はティアナをどうしたいんだ…?)

同じ質問の繰り返し。

出会った頃、飽きたら壊すと宣言しておいて、幼い少女の成長を見守って抱いた思いは――

「まさか…」

白い悪魔は自嘲した。

「まさか、ね…」



――これが、恋っていう感情なのか…?




< 95 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop