キミがいればいい
坂田が周りを気にせずに叫ぶのを、春隆は

「あ〜〜」

と声を出しながら琴見に聞こえないように坂田の声をかき消す。

「ごめん、先行ってて」

春隆琴見にそい言い、坂田の元に走っていった。
坂田はいつもどおり笑顔だ。
その笑顔が今はとてもにくたらしく見えた。

「坂田さん!ここで何やってるんですか!」

「おぼっちゃま。お父様が家でおぼっちゃまの帰りを待っております。故に、お迎えにまいりました」

「は?何で親父が?」

「お話は帰ってからにいたしましょう。とにかく、お急ぎください」

春隆は眉間にしわをよせ、頭をかいた。

「おぼっちゃま?」

「もう分かったから。分かったから。正門で待ってて。すぐ行きますから」

春隆は頭をぐちゃぐちゃにしながら琴見のとこりに走った。

「ごめん、今日俺帰るわ…」

「えっ?」
< 27 / 42 >

この作品をシェア

pagetop