キミがいればいい
少しの距離しか走ってないというのに、息が上がっていた。
緊張と危機感からだろうか?
息を整え、近くの木にもたれかかった。
これからどうしようか…。
一応このバックには、教科書類や制服、寝間着、携帯、ジャージ、サッカー部のユニフォーム、財布は入れてきた。
家を出ることだけを考え、今後のことを忘れていた。
誰かに連絡して、一時の間とめてもらおうか。
さて、誰に電話しよう?
そう思った時、頭の中には
「田添 敦浩(タゾエ アツヒロ)」の姿があった。
よし、明日、学校で聞いてみよう。
携帯の液晶画面を見ると、3時48分と表示されている。
その数字を見ると、急に眠気がさしてきた。
ちょうど近くに公園があったので、そこのベンチに横になる。
寝心地は悪くないが、目を閉じると、春隆はすぐに眠りについた。

「お嬢様、おはようございます。今日は、ゆっくり眠れましたでしょうか?」

「ええ。それより、今日は花沢家に行くんでしょ?」

"お嬢様"こと、荒城美波(アラジョウ ミナ)は執事にそう問いた。

「いえ、たった今花沢家から連絡が入りまして、午後1時からではなく、午後5時から、顔合わせを行いたいと」

「5時から?どうしてそんなに押しちゃったのよ、時間」
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