神様がくれた夏
やめて。
殴り合いなんて絶対見たくない。
先輩と夏目涼は相変わらず見合っている。
その視線で何を語り合っているのかはあたしには読み取れない。
どうしよう。
胸の奥を鷲掴みにされた様な不安が一気にこみ上げて押し寄せる。
どうしたら…。
なんて、悩んでいる暇もなかった。
気づいたら先輩は夏目涼に向かって行こうと一歩を踏み出していたもんだから、あたしは慌てて先輩の手首を掴んだ。
「先輩…帰りましょ?」
極めて明るくそう言葉にした。