神様がくれた夏
何度も何度も唾を飲み込む。
伝う汗は冷や汗じゃないことを祈りたい。
大丈夫。
だってあたしは先輩を恐いなんて思っていないもの。
先輩はそれからは何もせずに大人しくプールから出て行った。
その背中を見て、こっそり安堵の息を吐いた。
寿命が縮まる思いがする。
「……ごめん、先帰るからまた明日にしよう」
あたしは未だプールサイドに腰掛けている夏目涼にそう言った。
けれど夏目涼はあたしを見なかった。
どこか一点を見つめたまま。
その瞳にあたしは映らなかった。