神様がくれた夏
あたしの声に、彼はゆっくりと視線を移した。
彼があたしを見る。
あたしも真っ直ぐに彼を見た。
何が言いたいのか分からない。
どうして名前を呼んだのか分からない。
特に伝えておきたかったことはなかったのだが、名前を呼んでしまったのだ。
いつまでたっても次の言葉を発しないあたしに嫌気が差したのかどうなのか。
「なんだ?」
相変わらずの低い声でそう尋ねてきた。
どうしよう。
どうして名前を呼んでしまったのだろう。