神様がくれた夏



見るなよ。


チラみすんなよ。



恐れられている男―――夏目涼と普通に会話する異質な女になりたくないあたしは、ゆるりと視線を上げ彼を見つめた。



一刻も早くこの場を去ってほしいと思うあたしが、用は何なのかと尋ねようとしたときだった。



「あー…、あたしちょっとトイレー…」



居た堪れなくなったのか、ほのかはそう言うとそそくさと教室から出て行った。



「えぇ…?!」



あたしの声は届かない。


駆け出すほのかの走りは見たことがないくらいの俊足だった。



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