神様がくれた夏




怒りのような、けれどそれでいてとても愉快そうな表情。


その表情から読み取れるものはない。



そんな彼を見て、あたしは何も言えなかった。


カチカチと歯が擦れあう音だけが耳に届く。




あたしは彼を―――拒んだ。




そして竦むあたしに、彼はとても愉快そうに微笑んだのだ。


そして弧を描いた唇が開く。



「もしや処女?」



「…え?」



必死で紡ぎ出した声だけど、それは予想以上に情けないほど小さくて、フワっと簡単に消えてしまいそうな声だった。



それくらい危うげで危ない。


< 18 / 468 >

この作品をシェア

pagetop