神様がくれた夏
怒りのような、けれどそれでいてとても愉快そうな表情。
その表情から読み取れるものはない。
そんな彼を見て、あたしは何も言えなかった。
カチカチと歯が擦れあう音だけが耳に届く。
あたしは彼を―――拒んだ。
そして竦むあたしに、彼はとても愉快そうに微笑んだのだ。
そして弧を描いた唇が開く。
「もしや処女?」
「…え?」
必死で紡ぎ出した声だけど、それは予想以上に情けないほど小さくて、フワっと簡単に消えてしまいそうな声だった。
それくらい危うげで危ない。