神様がくれた夏
けれど心が寂しいと呟いている。
もう少し、と叫ぶあたしが確かにここにいることを実感する。
「おい」
不意に声をかけられた。
声をかけられることが珍しくて、あたしは勢いよく振り返った。
すると彼は片眉を少し上げ、
「手を動かせ」
厳しくそう言うもんだから、あたしは「…ごめんなさい」と小さく呟いては作業を再開した。
ゴシゴシと最終仕上げとばかりに残っている汚れを落としていく。
あたしの手にはいつものような力は入っていない。
落ちなければいいのに。
そこにずっとずっとこびり付いていればいいのに。