神様がくれた夏
「先輩…?」
あたしは上半身だけを起こして目の前の人を確認した。
何も言わないで立っているのは先輩。
いきなりこんな乱暴なことをしたのは先輩。
「いきなり…どうしたんですか…?」
何も喋ろうとしない先輩。
それが何だか急に恐ろしく感じてしまったのだ。
分からない。
奥底から溢れ出てくる、この恐怖のようなものは何だ?
(先輩…何が言ってください…)
それは言えなかった。
心の中だけでコッソリ願うように呟くことしか叶わなかった。