神様がくれた夏
流れてしまえばいい。
(…流れてください)
あたしは前に鞄を抱きかかえたまま、走ることなく、ゆっくりと歩き出した。
あっという間にローファーは水浸しになってしまう。
雨水を吸い込んだ制服に重みが増す。
気持ち悪いけれど、どうすることもできない。
こんな今のあたしの体では走り出すことは不可能に近かった。
それはたまたまだった。
たまたま校庭に視線を向けた。
そこには人がいたのだ。
一瞬本気で幽霊かと思い震え上がったが、足があることを確認するなりホッとした。