神様がくれた夏
どうしようもなくなってしまったもどかしさから、あたしはワザとバシャバシャと水飛沫を上げたりしてみた。
今現在こうして足を洗いざるを得ない状況に陥ってしまった理由。
それはさっきの授業―――習字の時間で余所見をしていた子が持っていた硯を落としてしまい、それが見事あたしの足の脛の上に落ちたのだ。
痛かったのは当たり前。
同時に飛び散った墨があたしの膝から下を汚したのは言うまでもないだろう。
1階で足が汚れたときなどに使えるような低い水道で足を洗っている最中だ。
「…こりゃ痣になりそうだ」
硯がもろに当たった場所にそっと触れる。
ジンジンと痛みは増すばかり。
まだ特に見た目の変化は現れていないけれど、これは痣になるだろうと予想できるほどの衝撃だった。
痛い…。