神様がくれた夏




それは彼なりの気遣いなのだろう。


さっき、あたしが異常なほどまでビクついてしまったから。



彼の手が戻っていく。


それと同時にあたしは足を踏み出していた。



前へ。



踏み出しては倒れこむように彼の胸に額を当てた。



相変わらず涙は止まらない。


彼の表情が見えなくなったのをいいことに、あたしは彼の胸の中で大泣きした。



爆発したかのように泣き声を上げた。




ずっと奥底に押し込んできたものを吐き出した。



全て。



何もかも雨に流れてしまえばいいのに。


流れてくれればあたしは自由になれるのに。


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