神様がくれた夏




彼がベランダから消えてしまえばもう何もできない。


仮にあたしの声が聞こえていても、彼は応えてはくれないだろう。




どうしようもなかった。




「お邪魔しますっ!!」




あたしは勝手に玄関を開けてはそう叫んでいた。



家の中に夏目涼以外の人がいたら、なんてことは微塵も考えなかった。


その時はその時、なんて割り切っていたのかもしれない。



あたしは靴を脱いでは、夏目涼の部屋を目指すべく階段を駆け上がった。




どうやら夏目涼以外に現在家の中にいる人はいないよう見える。


あたしは躊躇することなく階段を上がっては、予想のつく部屋の扉を開けた。


< 335 / 468 >

この作品をシェア

pagetop