神様がくれた夏
彼がベランダから消えてしまえばもう何もできない。
仮にあたしの声が聞こえていても、彼は応えてはくれないだろう。
どうしようもなかった。
「お邪魔しますっ!!」
あたしは勝手に玄関を開けてはそう叫んでいた。
家の中に夏目涼以外の人がいたら、なんてことは微塵も考えなかった。
その時はその時、なんて割り切っていたのかもしれない。
あたしは靴を脱いでは、夏目涼の部屋を目指すべく階段を駆け上がった。
どうやら夏目涼以外に現在家の中にいる人はいないよう見える。
あたしは躊躇することなく階段を上がっては、予想のつく部屋の扉を開けた。