神様がくれた夏




泣きたい。


いや違う、逃げたいだ。



猛ダッシュでこの場から離れたい。


今すぐにでも駆け出したい。




しかしそんなことができるはずがない。




裸足だし、石踏んだら痛いし、また洗わないといけなくなるし。


なにより仮に追いかけられたりしたら、逃げ切れる保障など1パーセントもないのだからそんなことはしない。




「………」




何も言わないのは何故だ。


あたしはそろりと彼を伺う。



泣くなり怒鳴るなり蔑むなりしてくれれば、あたしの中に〝やってしまった〟以外の感情が生まれてくるはずなのに。



今のあたしには〝後悔〟とバットタイミングを〝恨む〟気持ちしかない。



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