神様がくれた夏
ふと視線を上げれば、夏目涼は珍しく優しい瞳をしていた。
あたしはほのかに抱きしめられたまま、微笑んで夏目涼に言った。
「夏目涼だけを…犠牲になんてできないよ」
すると夏目涼は何かを言いたそうに口をモゴモゴ動かした。
そして何を思ったのか、そっぽを向いては小さく呟いた。
「あたし…気づいたら夏目涼も〝大切〟の中の1人だった」
「………」
「だから良かった。 その様子じゃ退学はないみたいだね?」
あたしは笑った。
それは心の底からの安堵の笑みだった。