神様がくれた夏
「あ…あいつ?」
疑問系で聞き返してしまったけれど、その直後にすぐ分かってしまった。
あいつ―――先輩のことだ。
先輩のことをあいつと呼んだ夏目涼。
夏目涼と先輩がどんな関係かは分からないけれど、少なくとも先輩をあいつ呼ばわりしたからにはそんな良い関係ではないのだろうということが予想できる。
夏目涼は暫しあたしを確認するかのように見つめると、何事もなかったかのように踵を返すと校舎へと向かって行ってしまった。
あ…あれ?
夏目涼の背中を暫し見つめる。
校舎へと消えていったのを見届けると、一気に今まで引き締まっていた何もかもが緩んだ気がした。