神様がくれた夏



時折胸が苦しくなる。


水中にいるような、そんな感覚。



「要件は何です?」



「あぁ、今度の週末、遊びに行こうというお誘い」



あたしの両頬を両手で挟んだまま誘いの言葉を口にする。


笑顔で頷くあたしは、彼にどのように映って見えているんだろう。



あたし笑えてる?


ちゃんと笑顔で笑ってるよね?



うん、大丈夫。


…大丈夫。




ボーっとしていたのだろう。


先輩が近づいてきたことに気づかなかった。



気づいたときにはもう間近に先輩の顔があって、あ、と思ったときには遅かった。



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