神様がくれた夏




「ま―――待って……死ぬ…」



とん、と。


先輩の胸を軽く押す。



いつもならばできないことだけれど、あたしの心がもう既に悲鳴をあげていた。



見ないでと。


こんなあたしを見ないでと。



そんな願いを強く込めて願う。



苦しくて苦しくて死にそうだ。



さすがに満足したんだろう先輩は怒ることなく、



「しっかり鼻で呼吸しろよ」



と、笑うだけだった。



それだけで安堵の息が漏れる。


やっと終わった。



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