神様がくれた夏



先輩は笑う。


ケラケラと、すごく楽しそうに。



あたしは曖昧に―――作り笑顔しかできなかった。



笑って、笑って。


笑って。




次に顔を上げて渡り廊下を見たとき、そこにはもう誰もいなかった。



まるでそこには最初から誰もいなかったかのような、そんな空間がそこにはあった。



その空間を見つめ、ほっと息を吐き出す。



やっと行ってくれたことに安心する。


ざわめきだした心が落ち着いていく。



良かったと、何が良かったのか分からないけれど、そんな気持ちになっている自分がいた。



< 65 / 468 >

この作品をシェア

pagetop