神様がくれた夏
先輩は笑う。
ケラケラと、すごく楽しそうに。
あたしは曖昧に―――作り笑顔しかできなかった。
笑って、笑って。
笑って。
次に顔を上げて渡り廊下を見たとき、そこにはもう誰もいなかった。
まるでそこには最初から誰もいなかったかのような、そんな空間がそこにはあった。
その空間を見つめ、ほっと息を吐き出す。
やっと行ってくれたことに安心する。
ざわめきだした心が落ち着いていく。
良かったと、何が良かったのか分からないけれど、そんな気持ちになっている自分がいた。