神様がくれた夏
先生は通常通り、あたしから教科書へと視線を戻すと告げた。
「じゃあ夏川、96ページから読んで」
それくらいで済むのならいくらだって読んでやろう。
だからあたしは、
「はい」
ハッキリと返事をしては立ち上がった。
ピンチな状況から即脱出できたことに安堵したあたしは、校庭に目を向けることなく教科書を音読し始めた。
けれど頭の片隅には彼が残っている。
何をしていたんだろう。
何がしたかったのだろう。
いくら考えても分からない。
そもそもあんなことをする時点でどうしてなのか分からない以上、彼の心情など理解し難いのだ。