草村の中の住人。



ある日、雲一つ無い晴れた日の夕暮れ頃。
また君に会うことができました。
君は最初に出会ったときと同じように
小さめの滑り台の上に座っていました。
そして誰かを待っているように、辺りをチラチラ見回していました。

その時僕も視界に入ったのでしょう。
パッと身構えたのが遠くからでもわかりました。

「どうしてそんなに怯えるの?」

僕は公園の入り口から動かずにいました。

「僕はなにもしないよ」

そして出来るだけ驚かせないように、静かに近寄っていきました。

最初身構えていた君は、僕が自分に危害を加えないとわかったのか、トントントンと滑り台の階段を降りて待ってくれていました。

「ありがとう」

そう言うと目を細めて笑ってくれました。

そういえば君は最初会ったときも、今も一人でいました。
ふとそんなことが浮かんだ僕は、ぽつりと聞いてみたのです。

「お母さんは?」

「…」

何も答えてくれません。

「お家は?」

「…」

何も答えてくれません。

時間からしたら数十秒ほどだったのでしょうが、その沈黙はとても長く感じました。

長い沈黙を破ったのは君でした。
ふっと立ち上がってさっきと同じ様に鉄製の階段を上り、ちょこんと座ったのでした。

何かを待っているような君に僕は無責任なことを言ってしまったと、今になって思います。
まだ僕は3歳でした。


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