【短編】カフェ・モカ
重い体を“cafe・sunset”まで引きずってくれるのは、嫉妬という名の鉄の意志。
ではなく、断わりきれない優柔不断さと約束をすっぽかせない生真面目さだ。
店に近づくごとにため息が出てしまう。
キミの彼女が性悪女でありますように。
そしたら、性悪女に文句の一つでも言ってやろう。
目を覚ませ、とキミにも言ってやろう。
キミの彼女が可愛くありませんように。
そしたら、キミを褒めてやろう。
あたしは自分を慰められるから。
紅く色づいている街路樹たち。
落ちた葉を、パリッと踏みしめてついに辿りついた。
“cafe・sunset”の看板犬が尻尾を振ってお出迎えしてくれる。
ラブラドールレトリバーのフランソワーズ。
いつもは天使みたいなこの子が、今日は地獄の門番みたいに見えてしまう。
腕時計は3時8分を指している。8分の遅刻だ。
「また、あとでね。」
人懐っこくあたしの足の周りをぐるぐる回るフランの顎を撫でて、重い扉を引いた。
ではなく、断わりきれない優柔不断さと約束をすっぽかせない生真面目さだ。
店に近づくごとにため息が出てしまう。
キミの彼女が性悪女でありますように。
そしたら、性悪女に文句の一つでも言ってやろう。
目を覚ませ、とキミにも言ってやろう。
キミの彼女が可愛くありませんように。
そしたら、キミを褒めてやろう。
あたしは自分を慰められるから。
紅く色づいている街路樹たち。
落ちた葉を、パリッと踏みしめてついに辿りついた。
“cafe・sunset”の看板犬が尻尾を振ってお出迎えしてくれる。
ラブラドールレトリバーのフランソワーズ。
いつもは天使みたいなこの子が、今日は地獄の門番みたいに見えてしまう。
腕時計は3時8分を指している。8分の遅刻だ。
「また、あとでね。」
人懐っこくあたしの足の周りをぐるぐる回るフランの顎を撫でて、重い扉を引いた。