【短編】カフェ・モカ
「あたし、帰るね。」

まだ口をつけていないモカをその場に残して、あたしは席を立つ。

「どうしたの?トモ?」

心配そうにあたしに声をかけるキミ。

「顔色が悪いですよ。」

あたしを見上げるエリちゃん。

「友達、友達っていいかげんにしてよね。あたしはキミのお守りじゃないの!」

友達なんて、嫌だ。

あたしを見送る二人の顔。

とても悲しく歪んでいくの。

あたしはそれを見ていられなかった。

吐き気がする。気持ち悪いよ。

マスターの声も、キミの声も、すべてを振り切って

そのまま逃げるように走り去った。

扉をひいた瞬間、あたしは現実に戻った気がした。

フランがあたしを覗き込む。

俯くとこぼれ落ちる雫を、両手で拭う。

外は日が落ちかけて、風が体に染みた。

冷たい・・・。

性悪女はあたしのほうだ。

そのとき初めて気づいた。

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