【短編】カフェ・モカ
「トモ!聞いてくれよ!」

耳を押さえながら携帯電話の時計に目をやる。

16:00きっかりだ。相変わらず、時間通りだ。

「俺の今年一番の大ニュースだってば!」

耳元の騒がしい声は右手ではシャットアウトしきれない。

あたしは、すぅっと小さく深呼吸した。

「う・る・さ・い~~!!!」

はぁと大きく息を吐いた。

「お前がうるさいよ。」

冷静なツッコミが返ってくる。

「耳を塞いでたから、加減できなかっただけよ。」

この席は店の中では個室のような位置にあるから、多少の声は店内に響かないのだ。
それもここを気に入っている理由の一つだ。

「それより聞いてくれよ!大ニュース。」

小学校の頃からキミは変わらない。

女の子みたいな顔立ちも、お喋りなところも、時間をきっちり守るところも。

変わったことといえば、さらさらとまっすぐに伸びる髪を、無理やりワックスでねじるようになったことかな。

本人いわく、直毛がコンプレックスらしい。

クセっ毛のあたしには羨ましいかぎりだけど。


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