【短編】カフェ・モカ
ポケットの缶コーヒーが震えた。

サトルくんからの着信だった。

「もしもし、サトルくんまだ?誰もいないんだけど。」

「ごめん、トモちゃん。ちょっとバイト長引いててオレも仲間も遅れるわ。」

「ユミたちも?」

「うん、先に連絡しといたから大丈夫。1時間後にその場所で!」

プツンと切れる電話。

この寒空の下であと1時間も待てるはずがない。

近くにファミレスがあったのを思い出した。

あそこで時間を潰そう。

ポケットの缶コーヒーを飲み干して歩き出す。

少し、ぬるいなぁ。

ぬるいのはあたしと一緒か。

熱すぎて、火傷するよりはいい。

きっとぬるいくらいがちょうどいい。

ファミレスの扉の前に立ったときだった。

隣の雑貨屋さんに入っていくエリちゃんの姿が見えた。
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