【短編】カフェ・モカ
「話を聞いてもらう前に、コーヒー頼むわ!ちょっと待って」

そう言って、キミはマスターがいるカウンターまで歩いていく。

よく通るキミの声。聞こえてくる注文に声をそろえる。

「カフェモカを一つ。上にはホイップを。たっぷりね。」

同じ。あたしと同じ。
いつもの注文だから目を閉じたって一字一句間違えずに言える。

キミはマスターがコーヒーを作り終えるまで、カウンターに肘をついて楽しそうに眺めてる。

「魔法みたいだね。」

って呟きながら。

いくつになっても変わらないキミのその純粋さのほうが

“魔法みたいだね”って

あたしはそう思うよ。
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