窓際のブラウニー
運ばれたコーヒーは
少し苦めのモカ。
田所さんの好きな苦い味。
横に添えられたブラウニーの甘さと
コーヒーの苦さがマッチしていて、なんとも言えない幸福感が体と心に広がってゆく。
昨日を思い出す。
携帯電話を取り出し、
田所さんからのメールを読み返す。
胸が熱くなるこの気持ちは
間違いなく『恋』そのものだった。
なのに、頭の中では昨夜の夫の怪しい行動を許せずにいた。
田所さんに恋をしていても、
夫への愛が消えたわけではないのだと時間が経てば経つほどに感じていた。
カランコロン
カランコロン
2人のお年寄りが店の中に入ってきた。
ふとこちらを見て、すぐに奥の席についた。