窓際のブラウニー
「大丈夫ですか?」
マスターがコーヒーのおかわりを持ってきてくれた。
ティッシュの箱と、クッキーをテーブルに置いた。
「すみません…びっくりしちゃって…」
私は、涙を拭き、マスターに笑顔を向けた。
マスターの人柄が伝わってくる。
何も言わずに優しく頷く姿が、田所さんと共通していた。
きっと将来田所さんはこんなおじいさんになるんではないかと思った。
「この写真集は、彼からもらったものです。全部ね… その写真も彼が撮ったものなんですよ。プロではないので、ボランティアの仲間からの応援で自費出版したものです。」
マスターの言う「彼」が、田所さんであることは間違いない。
田所さんは介護の仕事をしていることしか知らなかった。
何も話してくれないから、田所さんのことはほとんど知らないんだ、私。
彼らしいと思った。
優しい彼ならではの写真達だった。
でも、悲しすぎて、目を閉じたくなるような残酷な写真でもあった。