窓際のブラウニー
雪子さんという人の名前が頭から離れない。
きっと真っ白な肌をした優しい女性。
田所さんの愛する人はきっと素敵な人だから。
壁掛時計に視線を移すと、マスターも同じように時計を見ていた。
カランコロン
「真千子さん…間に合って良かった。」
昨日会ったばかりなのに
涙が出そうなくらいに感激した。
会いたくて会いたくて仕方がなかった。
まさか来てくれるとは思っていなかった。
「マスター、引きとめてくれたんですか?」
田所さんは息を切らせながら、マスターに声をかけ、上着を脱いだ。
「いいえ、引きとめる必要はなかったよ。」
マスターは私を見つめながら、コーヒーカップを温める。
コーヒーの匂いの合間から
ほんのり匂ったタバコの匂い。
田所さんの服の匂い。