窓際のブラウニー
「11時までに行くから真千子さんを引きとめてと、頼んでおいたんです。」
ジーパンに黒のセーター。
腕時計。
走ってくれたのか、髪が少しふんわりとしていた。
私の前の席に腰掛けた田所さんは、
きっと私の頭の中で考えていることを知らない。
『雪子さん』の存在を知ってしまったことも…
そのことに嫉妬を覚えてしまったことも。
「ごめんなさい。わざわざ来てくれたんですか?」
テーブルに肘をつき、笑顔でただ私を見つめる田所さんに言った。
「会いたかったから。良かった、会えて…」
田所さんとこの店の関係が気になった。
雪子さんのことも知っているマスターに、
私との密会を見られている。
私を引きとめておくように頼むなんて…
普通の関係ではありえない。
不倫……に見えるだろう。
どこから見ても、何かある関係。
W不倫。
何もしていないけれど、
2人の間に流れる空気はただの友人ではないことは明らかだった。
マスターは何者?
田所さんは謎だらけ。
あなたは誰?