窓際のブラウニー
「僕は、気が狂いそうになって、病院へ向かった。
もう雪子は息を引き取っていた。
僕は、雪子のそばでずっと泣いていたかった。
でも、僕にはすべきことがあった。白い犬を引き取りに行こうと思った。
雪子がどうしても助けたいと言った白い犬を、どうして僕は受け入れてあげられなかったんだろう、と僕は自分を責めた。」
田所さんの目からは大粒の涙がこぼれた。
「安楽死の順番を待つその犬に出逢い、僕は涙が止まらなかった。
その犬の首には、雪子がお気に入りだったハンカチが結ばれていたんだ。
雪子は、最後にその犬に会うことができたんだ。
会いに行く途中の事故だと思っていたが、実は、その犬にさよならを言った後だった。
僕は、急いで手続きをし、その白い犬を冷たい鉄格子の中から救い出した。
抱きしめると、その犬は僕の頬をなめた。」
雪子さんは本当に優しい人だったんだ。
きっと、雪子さんはちゃんと天国から田所さんを見てくれている。
田所さんが助けた白い犬『ゆき』をちゃんと見守ってくれているはずだ。