窓際のブラウニー
田所さんの顔を思い出そうとするのに、日に日にはっきりと思い出せなくなっていた。
あんなに見つめた笑顔なのに…
こうしていつか田所さんの顔を忘れてしまう。
心の中で静かに語りかける彼は、現実ではなく私の妄想の世界にのみ生きる。
今日、お習字教室に行こうと言ったお義母さんを恨んだ。
乗り込んだバスの中に、田所さんの姿がなかった。
何度か会ったことのあるおじさんが会釈した。
「おはようございます。」
ショックを隠しきれずに、私はうつむいた。
もう会えないの?
もう一生会えないの?