窓際のブラウニー
私は一人で歩いていた。
あても、なくただ歩くことが多くなり、少し精神的にも追い詰められていることを自分でも感じていた。
あの喫茶店から5分程の場所にある小さな小川を眺めていた。
季節によっては、美しい水鳥が羽を休めることもある綺麗な川。
散った桜の花びらが川の流れに乗って、どんどん遠くへ行く。
それを見ていた。
川の向こう側に人影が見えた。
午前10時の春の日差しは、想像しているよりも強く、眩しい。
眩しさに目を閉じた。
「真千子さん!!」
忘れるはずのない愛しい声。
しばらくただ見つめ合っていた。
眩しくて、よく見えない田所さんを必死で見つめる。
駆け出したい気持ちを抑え、冷静に頭を下げた。
「真千子さん、どうして・・・笑ってないんですか!」
田所さんは左手で日差しを避けながら、私に向かって叫ぶ。